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コラム
2025.06.13
コワーキングスペース運営のリアル:無人化戦略、高収益化、そして持続可能な成長への道 | いいオフィス
コワーキングスペース運営は、単に場所を提供するビジネスから、テクノロジーと戦略を駆使して収益性と持続可能性を追求する事業へと進化しています。本記事では、特に「無人運営」という新たな潮流に焦点を当て、そのメリット、具体的な収益性、運営代行や運営会社の役割、そして運営開始後に直面しうる課題とその対策について、実際のデータや事例を交えながら徹底解説します。さらに、高収益化を実現するための集客戦略についても深掘りし、需要から逆算した施設設計の重要性をお伝えします。
目次
コワーキングスペース運営の新潮流:「無人・省人化」とその可能性
人件費はコワーキングスペース運営における大きなコスト要因の一つです。無人・省人化は、この課題を解決し、収益性を大幅に向上させる可能性を秘めています。

無人運営のメリットと具体的な仕組み
- コスト削減と収益性向上: スタッフを配置しない、または最小限にすることで、人件費を大幅に削減できます。これにより、利益率の向上が期待できます。株式会社いいオフィスが提供する「無人運営パッケージ」「E Solution」では、スマートロック、監視カメラ、セルフチェックインシステムなどを連携させ、低コストでの24時間365日運営を実現。実際に、このシステムを導入した直営店舗「いいオフィス恵比寿」は、運営開始3ヶ月で単月黒字を達成し、その後も安定した収益を上げています。
- 運営の柔軟性と効率化: 24時間運営が可能になることで、利用者の多様なニーズに対応できます。また、予約管理や決済処理もシステム化されるため、運営業務が大幅に効率化されます。
- データに基づいた運営: 利用状況や売上データをリアルタイムで把握できるため、データに基づいた迅速な意思決定やサービス改善が可能です。
無人運営におけるセキュリティとトラブル対応

無人運営で最も懸念されるのがセキュリティとトラブル対応です。
- セキュリティ対策: スマートロックによる入退室管理、監視カメラによる常時録画、遠隔監視システムなどが不可欠です。また、利用者への利用規約の周知徹底も重要です。
- トラブル対応体制: 緊急時の連絡体制を確立し、迅速に対応できるようにしておく必要があります。遠隔で対応できる軽微なトラブルから、現地対応が必要な場合まで想定し、マニュアルを整備しておきましょう。いいオフィスでは、無人運営店舗向けに、本部による遠隔サポート体制も提供しています。
無人運営の収益性:実際の事例から見る可能性

いいオフィスの無人運営店舗の事例では、坪単価あたりの売上が有人店舗と比較して遜色ない、あるいはそれを上回るケースも出てきています。これは、人件費を抑えられる分、利益率が高くなるためです。特に、駅近などの好立地で、かつ個室ブースなど特定のニーズに応える設備が充実している場合、高い収益性が見込めます。
コワーキングスペース運営の外部リソース活用:業務委託と実質的な「運営代行」という選択肢
コワーキングスペースの運営を全て自社で行うのが難しい場合、外部の専門的なリソースを活用するという選択肢があります。特定の業務を専門業者に委託したり、包括的なサポートを受けることで、オーナーの負担を軽減し、より効率的で質の高い運営を目指すことが可能です。
世の中に「コワーキングスペース専門の運営代行会社」という看板を掲げている企業はまだ多くないかもしれませんが、実質的に運営の一部、あるいは広範な業務をサポートしてくれる企業は存在します。特に、いいオフィスのような企業では、フランチャイズ加盟やシステム導入といった形で、運営ノウハウの提供から集客支援、さらには条件次第で運営に関わる様々なサポートを行っており、これはオーナーにとって実質的な「運営のサポート」や「一部業務の代行」と捉えることができます。
業務委託による運営の効率化
コワーキングスペース運営に関わる業務は多岐にわたります。全てを自社スタッフで賄うのではなく、専門性の高い業務や定型的な業務を外部に委託することで、運営の効率化とコスト削減を図ることができます。
- 清掃業務: プロの清掃業者に委託することで、常に清潔で快適な空間を維持できます。
- 集客・マーケティング業務: Webサイト制作、SEO対策、オンライン広告運用、SNS運用などを専門業者に委託することで、より効果的な集客が期待できます。
- 会計・労務業務: 専門の税理士や社会保険労務士に委託することで、バックオフィス業務の負担を軽減できます。
- イベント企画・運営: イベント企画会社やフリーランスのイベントプランナーに協力を依頼することで、魅力的なイベント開催が可能になります。
無人運営システム導入による実質的な「運営の効率化・省人化」

近年注目されているのが、スマートロックやセルフチェックインシステム、監視カメラなどを活用した「無人運営」または「省人化運営」です。これらのシステムを導入し、その運用サポートやトラブル対応の一部をシステム提供会社や専門業者に委託することは、実質的に運営業務の一部を効率化・省人化し、オーナーの負担を大幅に軽減する「運営サポート」と言えるでしょう。
- システム導入のメリット:
- 人件費の大幅な削減: スタッフを常駐させる必要がなくなる、または最小限に抑えられるため、人件費を大幅に削減できます。これにより、収益性の向上が期待できます。
- 24時間運営の実現: スタッフの勤務時間に左右されず、24時間365日の運営が可能になり、利用者の利便性が向上します。
- 運営業務の自動化・効率化: 予約管理、決済処理、入退室管理などが自動化されるため、運営業務が大幅に効率化されます。
- システム提供会社のサポート: システムの導入設定、運用マニュアルの提供、トラブル発生時の遠隔サポートなど、システム提供会社が提供するサポート内容は多岐にわたります。これらのサポートをうまく活用することで、オーナーは安心して無人・省人化運営に移行できます。
いいオフィスが提供する「無人運営パッケージ」「E Solution」は、まさにこの実質的な「運営サポート」の一例です。必要なシステムを一括で提供し、導入から運用までをサポートすることで、オーナーはスムーズに無人・省人化運営を開始し、そのメリットを享受することができます。

外部リソース活用時の注意点
- 委託範囲と責任の明確化: どの業務をどこまで委託するのか、トラブル発生時の責任分担などを契約前に明確にしておくことが重要です。
- コストと効果の見極め: 委託費用に見合う効果が得られるのか、複数の業者を比較検討し、慎重に判断する必要があります。
- コミュニケーションの重要性: 委託先との定期的な情報共有や意思疎通を密に行い、認識の齟齬が生じないように注意しましょう。
- 自社のブランドイメージとの整合性: 外部業者を利用する場合でも、自社のコワーキングスペースのブランドイメージやコンセプトと合致するかどうかを確認することが大切です。
コワーキングスペース運営において、全ての業務を自社で抱え込む必要はありません。自社の強みを活かせる部分に注力し、専門性の高い業務や効率化が可能な業務は外部リソースを賢く活用することで、より質の高い、そして持続可能なコワーキングスペース運営を実現できるでしょう。
コワーキングスペースの運営費用:何にどれくらいかかるのか?
コワーキングスペースの運営には、様々な費用が発生します。無駄を省き、適切なコスト管理を行うことが重要です。
固定費と変動費の内訳
固定費
費目 | 内容 | 特徴・備考 |
家賃 | 物件の賃料 | 立地や広さによって大きく変動 |
人件費 | スタッフの給与、社会保険料など | 無人・省人化により大幅に削減可能 |
システム利用料 | 予約システム、会員管理システム、決済システム、セキュリティシステムなどの月額利用料 | 運営の効率化に必要なコスト |
減価償却費 | 内装や什器などの初期投資を耐用年数に応じて費用計上 | 初期投資額と耐用年数により決定 |
通信費 | インターネット回線利用料 | 安定した通信環境の維持費用 |
変動費
費目 | 内容 | 変動要因 |
光熱費 | 電気代・水道代・ガス代 | 利用者数、滞在時間、季節により大きく変動。特に電気代は大きな変動費 |
消耗品費 | トイレットペーパー、コーヒー豆、清掃用品など | 利用者数に比例して増加 |
広告宣伝費 | 集客のための費用 | 営業戦略や競合状況により変動 |
修繕費 | 施設のメンテナンスや修理にかかる費用 | 施設の老朽化や利用状況により変動 |
ポイント
オープンスペース型と個室型の電気代の違い: 一般的に、広大なオープンスペース全体を空調管理する場合、特に夏場(8月)や冬場(2月)のエアコン代は非常に高額になる傾向があります。一方、個室型スペースでは、各個室ごとの空調管理が可能になるため、オープンスペース型と比較して電気代を大幅に抑えられるケースがあります。
「いいオフィス」の実績データによれば、同様の営業時間であっても、オープンスペース型と個室中心型では、ピーク時の電気代が2.5倍程度の差が生じることもあります。 この差は、収益性に直結するため、施設設計の段階から考慮すべき重要なポイントです。
コスト削減のポイント
- 無人・省人化の推進: スマートロックやセルフチェックインシステムの導入は、人件費を最適化する上で最も効果的な手段の一つです。
- エネルギー効率の高い運営と設備導入:
- 個室型設計の検討: 前述の通り、個室中心のレイアウトは、空調効率を高め、電気代削減に大きく貢献します。
- 省エネ設備の導入: LED照明への切り替え、節水型トイレの採用、高効率なエアコンの選択など、初期投資はかかりますが、長期的に見て光熱費を削減できます。
- 適切な空調管理: 利用状況に応じた空調設定や、定期的なフィルター清掃なども重要です。
- 適切な仕入れ管理: 消耗品や備品は、複数の業者から見積もりを取り、まとめて購入したり、価格交渉を行ったりすることでコストを抑えます。
- 変動費の戦略的コントロール: 広告宣伝費は、閑散期と繁忙期で予算配分を変えるなど、利用状況や集客目標に応じて柔軟にコントロールします。効果測定を徹底し、費用対効果の低い施策は見直しましょう。
- 定期的な契約内容の見直し: インターネット回線や複合機のリース契約など、定期的に契約内容を見直し、より有利な条件がないか確認することも大切です。

高収益コワーキングスペースを実現する集客戦略:需要からの逆算思考
コワーキングスペースの収益性を高めるためには、効果的な集客戦略が不可欠です。闇雲に広告を打つのではなく、市場の需要を的確に捉え、そこから逆算して集客方法と施設設計を考えることが重要です。
多様な集客チャネルの活用
- オンライン広告:
- リスティング広告: 「地域名+コワーキングスペース」などのキーワードで検索するユーザーに直接アプローチできます。
- SNS広告: Facebook、Instagram、X (旧Twitter) などで、ターゲット層に合わせた広告を配信できます。デモグラフィック情報や興味関心に基づいたターゲティングが可能です。
- ポータルサイトへの掲載:
- コワーキングスペース専門ポータル: 多くの利用者が閲覧するため、施設の認知度向上に繋がります。
- 会議室予約ポータル: 例えば、ある会議室予約ポータルサイトで、特定のエリアにおける会議室の検索ボリュームが多いにも関わらず、掲載されている施設数が少ない場合、そのエリアでコワーキングスペース内に質の高い会議室を設けることは、大きな集客機会となり得ます。 このように、ポータルサイトのデータを分析し、市場のギャップを見つけることが重要です。
- SEO対策(検索エンジン最適化): 自社のウェブサイトが検索結果の上位に表示されるように、コンテンツの質を高め、適切なキーワードを選定します。
- MEO対策(マップエンジン最適化): Googleマップなどの地図サービスで上位表示されるように、店舗情報を正確に登録し、口コミを増やすなどの対策を行います。
- コンテンツマーケティング: ブログやSNSで、コワーキングスペースの魅力や活用方法、地域の情報などを発信し、見込み客との関係を構築します。
- オフライン集客: 地域イベントへの参加、チラシ配布、提携企業からの紹介なども有効です。
需要から逆算した施設設計とサービス提供
集客戦略は、施設設計の段階から始まっています。
- 市場調査とニーズの把握: 開業予定エリアの人口構成、企業数、競合施設の状況などを徹底的に調査し、どのようなニーズが存在するのかを把握します。
- ターゲット顧客に合わせた施設設計: 例えば、オンライン会議が多いビジネスパーソンをターゲットにするなら、防音性の高い個室ブースを多数設置する。クリエイターをターゲットにするなら、ハイスペックなPCやデザインソフトが利用できる環境を整えるなど、ターゲット顧客のニーズに合致した施設設計を行います。
- 柔軟な料金プランとサービス: 短時間利用、月額利用、法人利用など、多様な利用形態に対応できる料金プランを用意します。また、会議室利用、イベントスペース貸出、法人登記など、利用者のニーズに応じたオプションサービスを提供することで、客単価向上も期待できます。
運営開始後に直面する可能性のある課題とその対策
順調に運営を開始した後も、様々な課題が発生する可能性があります。事前に対策を講じておくことが重要です。
利用者トラブルとクレーム対応
- 騒音問題: オープンスペースでの通話やオンライン会議による騒音は、他の利用者の迷惑になることがあります。利用規約でルールを明確にし、注意喚起を行う必要があります。場合によっては、通話専用ブースの設置も有効です。
- 備品の破損・紛失: 利用規約で弁償について明記しておくとともに、監視カメラによる状況把握も重要です。
- 利用者間のトラブル: スタッフが間に入り、公平な立場で解決を図ります。無人運営の場合は、緊急連絡先を明示し、迅速に対応できる体制を整えておく必要があります。
- クレーム対応: 誠意をもって迅速に対応し、再発防止策を検討します。
施設の老朽化とメンテナンス
- 定期的な清掃とメンテナンス: 快適な利用環境を維持するためには、日々の清掃と定期的なメンテナンスが不可欠です。
- 設備の故障対応: Wi-Fiの不具合、複合機の故障などが発生した場合、迅速に対応できるよう、保守契約を結んでおくなどの対策が必要です。
- リニューアル計画: 長期的な視点で、施設の魅力度を維持・向上させるためのリニューアル計画も検討しておきましょう。
市場環境の変化への対応
- 競合の出現: 新たな競合施設が出現した場合、自社の強みを再確認し、差別化戦略を見直す必要があります。
- 利用者のニーズの変化: 働き方やテクノロジーの変化に伴い、利用者のニーズも変化します。定期的にアンケートを実施するなどして、ニーズの変化を捉え、サービス内容をアップデートしていく柔軟性が求められます。
- 経済状況の変動: 景気変動などが利用者の数や利用頻度に影響を与える可能性があります。安定した収益構造を構築し、リスクに備えておくことが重要です。
まとめ:データと戦略、そして柔軟性がコワーキングスペース運営成功の鍵
コワーキングスペース運営は、単に場所を貸すだけでなく、テクノロジーを活用し、市場の需要を的確に捉え、戦略的に事業を展開していくことが求められる、新たなビジネスです。無人運営という新たな選択肢は、コスト削減と収益性向上に大きく貢献する可能性を秘めています。また、運営代行や運営会社といった外部リソースをうまく活用することも、成功への近道となり得ます。
高収益化を実現するためには、多様な集客チャネルを駆使し、市場の需要から逆算して施設設計やサービス提供を行うことが不可欠です。そして、運営開始後も、利用者トラブルへの対応、施設のメンテナンス、市場環境の変化への適応など、様々な課題に柔軟に対応していく必要があります。
データに基づいた意思決定、戦略的な思考、そして変化を恐れない柔軟な姿勢こそが、競争の激しいコワーキングスペース市場で成功し、持続可能な成長を遂げるための鍵となるでしょう。
