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コラム
2025.05.27
【2025年版】コワーキングスペース補助金ガイド | いいオフィス
コワーキングスペース開設の初期投資を最小化する――
その具体策として押さえておきたいのが公的補助金です。
本稿では、2025年創設の「新事業進出補助金」を筆頭に、「コワーキングスペース開設支援事業」(自治体)や年度によって無人運営ツール導入にも活用し得る「IT導入補助金」までを網羅。
各制度の概要、申請要件、補助率・上限額、対象経費、採択のポイントに加え、実際の活用イメージとスケジュールを整理しました。
目次
コワーキングスペースと補助金の基礎知識
コワーキングスペース開設の主な課題は ①初期投資の重さ ②運営コストの継続負担 ③無人化に向けたIT設備投資 の3つです。
補助金は「返済不要」という大きなメリットがありますが、採択後の事業実施や実績報告が一定期間必要となり、申請締め切りまでに事業計画や各見積もり策定など必要な準備期間として最短でも1〜3か月が必要です。
そこで「ゴールから逆算した事業計画」が成功の鍵になります。
補助金を活用する3大メリット
- 自己資金の圧縮
補助率2分の1〜3分の2の制度が多く、1,000万円の投資でも実負担は500万〜330万円に抑えられる。 - 資金繰りの安定化
採択決定後に金融機関のブリッジローンなど、キャッシュフロー確保の選択肢が増える。 - 事業計画のブラッシュアップ
コワーキングスペースの収支計画を作る過程で、施設設備や収益モデルの完成度を上げることができる。

【終了】事業再構築補助金(〜2025.3)— 最大8,000 万円で大規模改装を後押しした代表的制度
制度の概要と実績
- 目的:ポストコロナの構造転換を促すため、中小企業が新市場へ挑戦する際の設備投資を支援
- 補助上限・率:最大8,000万円/補助率 2⁄3(中小企業の場合)
- 最終公募:第13回(2025年1月10日〜3月26日)をもって終了
出典:(C) 経済産業省 中小企業庁
コワーキングスペースでの主な活用例
投資内容 | 概要 |
フロア全面改装 | 空室階をフルリノベして、個室・会議室を新設 |
旧社員寮の転用 | 社員寮をサテライト型コワーキングへ用途変更 |
無人運営化 | スマート入退室・自動精算機を導入し省人化モデルを確立 |
過去の採択案件は公式サイトの採択結果ページで公開されています(出典:中小企業庁>採択結果)
一覧を確認すると、毎年度コワーキングスペースやシェアオフィス関連の計画が採択されており、採択件数が10件を超えた年もあります。こうした実績は、本補助金がワークプレイス系投資に適した資金調達手段として機能してきた裏付けと言えます。
得られた3つの教訓
- 競争率は常に3割台
伴走支援者と磨いた高精度の事業計画が採否を分けた。 - 付加価値×地域貢献が採点の王道
「新市場参入+地域課題解決」をセットで示すことで高得点を獲得。 - 手続き遵守が必須条件
交付決定後着工ルールや証憑管理の徹底が、不採択・返還リスクを左右した。
この3点は後継の「新事業進出補助金」でも有効
事業再構築補助金の申請・実行のノウハウ(市場分析の深掘り、数値根拠の明示、証憑の整理方法など)は、新制度でもそのまま流用できる部分が多いと言えます。

新事業進出補助金――最大9,000万円で新規事業を後押し
制度概要
旧・事業再構築補助金の後継として2025年度からスタートしました。
新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を補助率1/2で支援します。
第1回公募は2025年4月22日〜7月10日(18:00)まで。
出典:(C) 中小企業庁
補助上限額(大幅賃上げ特例あり)
従業員数 | 通常上限 | 賃上げ特例上限 |
20名以下 | 2,500万円 | 3,000万円 |
21〜50名 | 4,000万円 | 5,000万円 |
51〜100名 | 5,500万円 | 7,000万円 |
101名以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
出典:(C) 独立行政法人中小企業基盤整備機構
申請要件(抜粋)
- 付加価値額の年平均成長率 +4%以上
- 1人あたり給与支給総額の年平均成長率 +2.5%以上 または最低賃金伸び率以上
- 事業所内最低賃金が地域最低賃金+30円以上
- 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表
申請スケジュール(2025年)
- 公募開始:4月22日
- 締切:7月10日 18:00
- 交付決定:9月下旬(見込み)
- 補助事業実施期間:交付決定後14か月以内
コワーキングスペースでの活用イメージ
投資内容 | 経費区分 | 採択アピールのポイント |
空き物件の全面改修(固定席・ブース・会議室新設) | 建物費・機械装置費 | 空き家活用で地域課題を解決 |
スマートロック・顔認証ゲート・セルフ決済端末 | 機械装置・システム構築費 | 省人化による収益性向上を数値で示す |
クラウド型予約・会員管理SaaS | クラウドサービス利用費 | DX化で付加価値と顧客体験を向上 |
ポイント
- 無人運営システム一式は「機械装置・システム構築費」および「クラウドサービス利用費」として計上可能。
- 単なる設備更新ではなく「DXによる新サービス創出」を明確に打ち出すと加点。
採択ポイント
- 新市場×既存資源――自社の強みを生かした異分野シナジーを明示
- 賃上げ・雇用創出――給与総額の伸び率を具体的な数値で示す
- 地域波及効果――空き家活用、DX人材育成など地域課題と結びつける

コワーキングスペース開設支援事業――地域色豊かなメニューを活用
自治体が独自に実施する「コワーキングスペース開設支援事業」は、空き物件の再生や地域 DX を後押しする目的で、建物改修費や運営費を補助するローカルメニューです。
制度内容や公募時期・補助率は地域ごとに大きく異なるため、事例を通じた比較が欠かせません。
ここでは兵庫県内で実施された2件のモデルケースを取り上げ、募集状況と活用のポイントを整理します。
【終了】兵庫県神河町「IT事業所・コワーキングスペース開設支援事業」
- 内容:上限300万円/補助率1/4(空き家改修費定額加算あり)
- 状況:2025年3月31日で募集終了。次年度は要確認。
出典:(C) Kamikawa Town
活用のコツ
- 交付決定前の契約・着工は原則補助対象外
- 「空き家活用」「地域人材活用」などローカル加点を把握
- 県→市町連携型補助など二重取りが可能か事前に確認
【終了】兵庫県(2024年更新)「コワーキングスペース開設支援事業」
- 内容:運営支援型 上限900万円/整備支援型 上限550万円/補助率1/2〈県1/4+市町1/4〉(空き家活用で+100万円)
- 状況:令和6年度は第1回募集(2024年5月8日〜6月28日)※終了
出典:(C) Hyogo Prefectural Government活用のコツ
- 申請前に市町担当課へ事前相談し、市町経由で応募するルールを厳守
- 空き家物件を活用すると上限加算&加点評価を獲得
- 県補助と市町独自補助を組み合わせられるか要チェック
【参考】IT導入補助金――年度によっては無人運営ツールも対象
2025年度の「サービス等生産性向上IT導入補助金」はクラウドSaaS中心で、スマートロックや顔認証端末などハード系ツールは登録が極めて少ない状況です。
ただし過去には入退室管理システムが採択された年度もあり、ツール登録リストは年3〜4回更新されるため定期的なチェックが推奨されます。
出典:(C) 独立行政法人中小企業基盤整備機構
IT導入補助金とあわせて“候補”に入れておきたい4つの関連補助金
例えば、私たち「いいオフィス」が提供するコワーキングスペースの無人運営システム・顧客管理システム・予約システムなどは、年度や公募要領の記載内容によっては以下の補助金に該当する可能性があります(採択可否は事務局の判断となります)。
補助金名 | 概要と想定される適用ポイント |
観光地・観光産業における人材不足対策事業 | 観光施設(宿泊業等)の省人化・業務効率化投資を支援。フロントセルフチェックインやスマートロックなどが対象経費に含まれる公募回もあり、観光地に立地するコワーキングスペースなら要件を満たす可能性があります。 |
小規模事業者持続化補助金〈一般型〉 | 販路開拓や業務効率化の設備・システム導入を支援(上限50〜200万円/補助率2⁄3)。コワーキングスペースの予約・会員管理システムを用いた新サービス告知や集客活動とセットで申請できる場合があります。 |
中小企業省力化投資補助金(一般型) | IoT・ロボット等による省人化機器導入を補助(上限1,000万円/補助率1⁄2)。スマートロックや顔認証ゲート、無人決済端末など「ハード+クラウド」型設備をまとめて計上できる枠です。 |
中小企業成長加速化補助金 | 売上高100億円を目指す成長投資を支援。DX化やデータ活用による高付加価値化が評価軸とされており、顧客データを統合管理するSaaS導入が対象となるケースがあります。 |

ご注意ください
- 上記4制度は毎年度で対象経費・補助率・公募スケジュールが変動します。
いいオフィスのシステムが補助対象として認められるかは、各公募要領の記載内容と事務局の審査結果によります。必ず最新の公募要領を確認し、必要に応じて事務局へ事前相談のうえご検討ください。
補助金申請を成功させる5ステップ
- 制度選定とスケジュール逆算
公募締切に合わせ、物件取得や工事日程を調整。 - 事業計画の数値化
利用者数・売上・稼働率を3〜5年分予測し、黒字化までのロードマップを提示。 - 地域課題との連携
空き家活用、移住促進、創業支援イベント等を盛り込み地域波及効果を強調。 - 専門家・金融機関と協働
認定支援機関・金融機関・建築士の連名で申請すると評価が向上。 - 実績報告までの体制整備
領収書・契約書・施工写真を漏れなく保管し、報告期限と精算手続きを厳守。
まとめ
- 国の大型枠:事業再構築補助金は終了。2025年度からは 新事業進出補助金(最大9,000万円)を活用。
- 自治体枠:コワーキングスペース開業エリアの自治体で「コワーキングスペース開設支援事業」を確認。
- IT枠(参考):2025年度は対象ツールが限定的だが、IT導入補助金の登録動向を定期チェック。
次のアクションプラン
- 新事業進出補助金の締切から逆算でタスク化
- 行政窓口・認定支援機関へ早期相談し要件適合性を確認
- 金融機関と連携してブリッジ資金を確保し、採択後のキャッシュフローを安定化
補助金を戦略的に組み合わせれば、自己資金を抑えつつ「低リスク・高収益のコワーキングスペース」を実現できます。本ガイドを参考に最適な制度を選び、開設プロジェクトを一歩前へ進めてください。
